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ICT活用で地方のSTEAM教育や学校教育を変える

プログラミングの授業を生徒たちに行う中村先生
2022.04.21

東京から徳島までは、飛行機で1時間ほど。松茂町の小中学校には、空港から車で20~30分あれば到着します。ヴィリングの代表であり、講師として登壇する中村先生は、月に1度、授業のために徳島を訪れる予定で授業計画を組み立てていました。

黒板の前に立つ中村先生

「東京の企業と連携した新しいSTEAM教育の取り組みは、地元のテレビや新聞でも紹介されました。」


今回紹介する喜来小学校では、4年生から6年生向けに計6回の授業を計画。学期の前半では、プログラミングの仕組みの理解からドローン操作まで体験を通して学びました。

ドローンを飛ばす練習をする生徒たち

「ドローンをうまく飛ばすために、計画を立て、可能性を考える、という思考のトレーニングを何度も繰り返します。」


コロナ禍で進んだ
遠隔授業への期待と可能性

しかし、今年度もコロナの感染拡大の波が繰り返され、中村先生が徳島へ来られない期間もありました。ここで当然のように選択肢として上がってきたのが「オンライン授業」というスタイル。すべての授業計画のなかに、オンライン化を取り入れられるよう学校と連携しながら変更・対応しました。

遠隔地にいる講師によるオンライン授業を取り入れたことがない、という学校もまだまだ多いかもしれません。
でも実はプログラミング授業こそ、「オンライン授業」の魅力や可能性を気軽に実感できる要素が詰まっているのです。

喜来小学校4年生では、2回目のプログラミング授業を「オンライン」に切り替えて対応。
「いまからみんなのパソコンをピアノにかえますよ~」という中村先生の声に子どもたちもワクワクしていました。

プログラミングの授業内容のスライド

「『知る』と『つくる』をセットにすることで、技術を活かす授業展開。」


オンライン授業で見える
担任の先生の”場づくり”力

オンライン授業は講師の発信が一方通行になり、受け身の授業になる傾向があります。しかし、ひとり一人がタブレットを操作するプログラミング授業では、生徒たちが「自ら考えて行動する」ということが前提なので、自然と”参加型授業”になります。
さらに、喜来小学校ではクラス担任の松永先生による見事なムードづくりで、東京の中村先生とのやりとりが盛り上がる「双方向コミュニケーション」がうまれていました。

画面越しに生徒たちに授業する中村先生

「学んだテクニックを使って夢中になって取り組む様子が、画面越しに伝わってきます。」


スライドをつかいながら中村先生が新しい技術を説明し「ではやってみましょう!」と呼びかけると、その声を受けて松永先生は「さぁなにをするか分かりましたか。これからするのは〇〇ですよ」と復唱や言い換えを交え、目指す方向を分かりやすく表現していきます。

リモートで授業を行う中村先生

「できた?」と松永先生が声を掛けると、できた!!と生徒たちの元気な声が教室に響きます。「いい感じだね!じゃぁ、次教えてもらおうか」とクラスの雰囲気を盛り上げながら、モニターの向こうの中村先生にバトンを渡します。

笑顔で話す中村先生

「ふだんどんなクラス運営をしているかがよく見えます」と中村先生。先生方の強みやスキルに気付けるのも、外部と連携した授業が生む付加価値です。


STEAM教育の真の目的を伝え続ける

中村先生は、”STEAM教育が持つ本当の魅力”を、子どもたちだけでなく、学校の先生たちにも伝え続けたいと考えています。

この日の喜来小学校の授業の最後に、中村先生はこう言いました。

「もしみんながギターがひけなくても、ドラムを持っていなくても、コンピューターがあれば音楽を自分でつくることができます。音を出して思い通りのメロディもつくれます。コンピューターをつかってなんでも試すことができます。大人になっても、自分で音楽がつくれるということを覚えておいてくださいね」。

中村先生は毎回授業のなかで子どもたちに「新しい技術や知識」を届けます。そして必ず「技術や知識をなんのためにどう活かすし、なにを実現するかを考え続けて欲しい」というメッセージも伝えています。

中村先生は、この部分にこそ、STEAM教育の真のねらいがあると話します。

プログラミングの授業を生徒たちに行う中村先生

「プログラミングの授業はあくまでもきっかけなのだということを、誰よりも『学校の先生』に伝えたいと考えている中村先生。」


「STEAM教育のほんとうのゴールは、強い思いがあれば、コンピューターやAI技術を活用して実現していくことができるんだということに気付くことです。
そのためにも、子どもの探究心を刺激することが必要で、『実現できる!』という喜びを何度も体験させてあげることが欠かせません。
そしてそれを繰り返し経験させてあげられる方法のひとつとして、”プログラミング授業”が活用できる。そのことを先生に知ってもらいたいという気持ちで授業を届けています」。

「やってみたい!」を現実にするには、科学・技術・物理・数学など多岐にわたる知識や学びが必要だと、子どもたち自身が気付けるSTEAM教育。
その気付きを、繰り返し、手軽に、体験から学べるプログラミング授業。
STEAM教育とプログラミング授業に欠かせない学校現場のICT活用。

これら3つに同時に取り組んだ徳島・松茂町の小中学校の様子を、徳島で子育てするいち保護者の目線で取材し、ここまでお届けしてきました。
次回は「ヴィリングと連携しSTEAM教育実現」に取り組んできた一年を振り返る最終回です。

マツシゲートからオンライン参加する後藤先生

「STEMON徳島校の後藤先生も、松茂町内にある交流拠点マツシゲートからオンライン参加。」


ライター紹介

宮本幸子(みやもとさちこ)/地方でも実現できる「プログラミング的思考を育むSTEAM教育」に関心を持ち、株式会社ヴィリングが提供する公立小中学校のSTEAM教育を取材中。タウン誌の編集やラジオリポーターを経て、現在はライター・講師として活動。徳島県在住、二児の母、1980年生まれ。