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放課後等デイサービスや児童発達支援事業所の新規開業のために、事前に知っておくべき7つのことをまとめました。

放課後等デイサービスや児童発達支援事業の基本的な仕組みや、開業時の資金調達方法、さらには最新の放課後等デイサービス・児童発達支援事業の市場動向なども合わせてまとめたボリュームたっぷりの記事となっています。

開業を考えている方にはぜひ参考にしていただきたいですが、事業自体が各種法令と密接に関わっており、定期的に法令の改正も行われているので、行政から発信される最新の情報をチェックしておきましょう。

目次

  1. 放課後等デイサービス・児童発達支援とは?
  2. 放課後等デイサービス・児童発達支援の種類
  3. 報酬と売り上げの基本的な仕組み
  4. 放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の認可申請
    1. 法人基準
    2. 人員基準
    3. 設備基準
    4. 運営基準
  5. 放課後等デイサービス・児童発達支援事業の開業資金
    1. 初期費用
    2. 運転資金
    3. 資金調達方法
  6. 放課後等デイサービス・児童発達支援事業所を開業する際のプロセス
  7. 最新の放課後等デイサービス・児童発達支援事業の事業環境
    1. 令和3年度報酬改定の実施
    2. 放課後等デイサービスと児童発達支援の集客戦略の変化
    3. 保護者ニーズの変化
    4. 全国的で広がるプログラミング×療育の可能性
  8. まとめ

放課後等デイサービス・児童発達支援とは?

放課後等デイサービス(放デイ)・児童発達支援(児発)は、児童福祉法を根拠とした認可事業です。

行政の認可指定を受けた事業者が、身体・精神・知的障がいをもつ、または発達に心配のある子どもを預かり、集団生活や社会生活を送るために必要な能力を身につける支援を療育として行います。

子どもの年齢によって、放課後等デイサービス(学籍のある18歳まで。特例により20歳まで。)、または児童発達支援(小学校就学前の6歳までの未就学児)の2種類に分けられます。

放課後等デイサービス・児童発達支援の種類

放デイや児発の利用には受給者証が必要です。障害者手帳と基準が異なり、相談支援の内容を考慮した上で、療育の必要性を各自治体が決定します。

医師の意見書により通所の必要性が認められた子どもが通所するケースもあります。以下は施設の種類です。

1.単独型の放課後等デイサービス
小学生~高校生までを受け入れることができます。

2.単独型の児童発達支援事業所
未就学の子ども(小学校就学前の6歳までの障がいのある子ども)を受け入れることができます。

3.単独型の児童発達支援センター
児童発達支援事業所と同じく、未就学の子ども(小学校就学前の6歳までの障がいのあるこども)を受け入れることができます。児童発達支援事業所との違いは児童発達支援の役割に加え、障がい児相談支援や保育所等訪問支援などの地域支援の役割を担っている点です。

4.多機能型事業所
放デイと児童発達支援を組み合わせた施設です。

報酬と売り上げの基本的な仕組み

放デイ・児発の利用者は、利用料の10%を自己負担し、残りの90%は児童福祉法に基づいた障害児通所給付金として事業者に支払われます。この給付金が事業者に振り込まれるのは、利用からおよそ2か月後になります。

売上の額は基本的には「1日あたりの利用者数×開所日数」によって決まります。福祉事業の利益率は良くても10%前後と言われていますが、放デイの利益率(収支差率ともいう)は11.0%で福祉事業の全体平均の3倍くらいです。これが後程説明する令和3年報酬改定の根拠とされています。

例)単独型の放デイのケース
・1人あたりの平均単価:10,000円
・1日の平均利用者数:10人
・1か月あたりの開所日数:24日(月曜~土曜の4週間)

1か月の売り上げは、
10,000円×10人×24日=2,400,000円

1か月の利益は、
2,400,000円×0.07=168,000円

となります。

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の認可申請

法人基準

株式会社、NPO法人、合同会社などの法人を設立する必要があります。すでに法人格を持っている場合は、児童福祉法に基づき児童発達支援事業を行う旨を明記し、事業目的の変更手続きが必要です。

人員基準

施設形態によって必要とされる人員は異なります。事業所の形態や提供するサービスの内容に応じて、人員基準が異なる点や資格要件については、その都度、確認する必要があります。逆に人員欠如があった場合は減算の対象となり、収入減につながります。必要な人員が配置されるまで減算期間は継続しますので十分注意してください。

1.児童発達支援センター以外の場合
・管理者
常勤1名。他の職務との兼務可

・児童発達支援管理責任者
常勤1名以上。児童発達支援管理責任者は、障害児支援に関する専門的な知識・経験があって、個別支援計画の作成・評価などの知見・技術があることが必要。障害者自立支援法のサービス管理責任者の要件と同じく、一定の実務経験と児童発達支援管理責任者研修及び相談支援従事者初任者研修(講義部分)の修了が要件です。 過去にサービス管理責任者研修(児童分野)を修了している者については、児童発達支援管理責任者研修を修了しているものとみなします。

・保育士または指導員
1名以上は常勤です。利用者数によって配置人数の指定があります。
10名以下:2人以上
11~15名:3人以上
16~20名:4人以上

・機能訓練担当職員
理学療法士や作業療法士など、必要な機能訓練を行う場合に配置します。
保育士または指導員の数に含めることが可能です。

2.児童発達支援センターの場合
上記の児童発達支援センター以外の場合に加えて、以下の人員が必要です。
・嘱託医(1名以上、重たる障害区分に基づいた専門医)
・児童指導員および保育士
・栄養士および調理師(各1名以上)

3. 主として難聴が通所する事業所
・言語聴覚士
・機能訓練担当職員

4.主として重症心身障害児が通所する事業所
・看護師
・機能訓練担当職員

設備基準

1.指導訓練室
子どもたちのプレイルームとして過ごす場。広さの基準は自治体ごとに異なります。

2.事務室
事務専用スペース。

3.相談室
プライバシーを確保できる設備や備品を備えた相談用スペース。静養室(必須ではないがある方がよい)と兼ねる場合もあります。

4.トイレ・手洗い場
手指を洗浄し、感染症予防に必要な設備。

運営基準

主な運営基準項目としては以下が挙げられます。
・利用定員10名以上(主な利用者が重症心身障害児の場合は5名以上)

・苦情を受け付けるための窓口

・医療機関との協力体制の確立

他にもサービス提供時間等は指定申請時に届け出た運営規定の通りに運営を行う必要があります。

放課後等デイサービス・児童発達支援事業の開業資金

初期費用

1.不動産・施工費用
施設に使用する不動産費用は最も金額が大きく、開業する地域によっても異なります。一般的には100万円~500万円と言われていますが、「購入」や「賃貸」、「ワンフロア」や「一軒家」など不動産の条件によって変動します。

2.車両購入費用
利用するお子さまを送迎する車両は欠かせません。台数は通われるお子さまの人数や事業所がカバーする地域によりますが、通常2~3台が必要と言われます。特に車椅子で乗車可能な福祉車両は高額かつ導入に時間もかかるため、リースなども検討してみるとよいでしょう。

3.保険費用
放課後等デイサービス・児童発達支援事業では、賠償責任保険の加入が義務付けられていませんが、施設自体や、放デイ・児発に通うお子さまのケガや事故に対する保険は欠かせません。

施設賠償保険は平均6万円、火災保険は平均2万円かかると見込んでおきましょう。施設内外でのお子さまのケガなどにも対応できる損害賠償保険をはじめ、最近では福祉事業者向けの保険商品も増えてきています。また、送迎用車両に対する自動車保険も必要です。

3.備品費用
放デイ・児発の運営では多くの備品を使用します。
例)
・ロッカー
・机、椅子
・パソコン
・複合機
・冷蔵庫
・電子レンジ
・おもちゃ
・テレビ
・機能訓練機器
・教材

4.求人費用
「児発管」、「児童指導員」、「保育士」などのスタッフ全員を有料の求人広告媒体で募集する場合は費用が発生する場合があります。
知人などによる紹介採用(リファラル採用)を行う場合は求人費用は発生しません。

5.集客費用
放デイ・児発に通うお子さまを集客することは欠かせません。近年は施設の増加傾向が著しく、すでに飽和状態の兆しも見えています。近年の現状については後程で詳しく説明します。

集客のために、Webサイトやパンフレット作成、ポスティングの実施、広告媒体への出稿などを行う場合は、それぞれ費用がかかるため、開業前にどのような集客施策を実施するかを練っておく必要があります。

運転資金

放デイ・児発の収益は開業してから2か月後に得られるため、開業初めの数か月分の運転資金を確保する必要があります。

1.毎月の人件費
給与、役職手当、法定福利費(社会保険料の事業所負担分)、通勤手当などがかかるため、スタッフ人数と役職等を踏まえたうえで、どの程度費用がかかるかを見積もっておきましょう。

例)
・児童発達管理責任者:250,000円/月

・従業員(常勤):200,000円/月

・従業員(非常勤で週2回×6時間):1,000円/時間

児童発達管理責任者1名、従業員(常勤)3名、従業員(非常勤)2名の場合、1か月にかかる人件費は約100万円近くになります。

2.家賃などの固定費
運営に当たっては以下のような固定費も発生します。
例)
・家賃
・指導光熱費
・消耗品代
・駐車場代
・ガソリン代

資金調達方法

上記の初期費用や開業はじめ数か月の運転資金も含めると、一般的には1500万円程度必要と言われており、自己資本以外は融資に頼る必要があります。

融資には大きく分けると公的融資と民間融資の2つがありますが、いずれにしても事業計画書を綿密に作成してしっかり準備を行ったうえで、資金調達方法をよく検討してください。

1.公的融資
よく上げられる制度としては、日本政策金融公庫の新創業融資制度、各自治体の中小企業向けの融資制度、独立行政法人福祉医療機構の3つがあります。

新創業融資制度は新規開業向けの資金制度を設けており、無保証人・無担保で受けられます。

各自治体の中小企業向けの融資制度は多くの場合、自治体が金融機関の貸付原資の一部を負担することで長期・固定の低利な融資を実現させ、信用保証協会に支払う保証料の一部を自治体が補助し負担の軽減を図っています。詳細は各自治体に問い合わせしてください。

独立行政法人福祉医療機構の融資制度は、放課後等デイサービスや児童発達支援事業などの社会福祉施設を整備する際に必要となる設備・設置資金、経営資金を、長期・固定・低金利で融資する制度です。詳細は独立行政法人社会医療福祉機構へ問い合わせしてください。

2.民間融資
民間の金融機関では返済能力を厳しく問われるため、融資のハードルが高く、開業前や開業直後の融資は難しい場合が多いです。

どうしても民間融資を利用したい場合は、保証人として事業者の信用力を補完してくれる信用保証協会の利用も検討してください。

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所を開業する際のプロセス

1.事業内容の決定
地域の特性やニーズを把握し、開業予定地や事業規模などの事業内容を決めます。

2.事業の開始時期決定
事業開始日から逆算して資金調達や必要書類の準備、施設の工事期間などのスケジュールを見積もります。開業準備はなるべく半年から1年前には始めましょう。

3.事業計画書・必要書類の作成
放デイや児発を開業する際に重要なのは、運営方針をはじめ具体的なサービス内容や収支計画、資金調達計画などが記載された事業計画書です。事業計画書の他にも膨大かつ複雑な書類を提出する必要があります。申請先の自治体によって提出書類の種類や様式、提出時期などが異なるため、事業計画の作成段階から自治体の窓口等で、情報収集や確認作業を怠らないようにしましょう。申請方法についての詳細は各自治体の窓口やホームページ等で確認できます。
以下は主な必要書類の一例です。

・指定申請書
・添付書類一覧表
・定款、寄附行為及びその法人の登記記載事項証明書又は条例等
・従業者等の勤務体制及び勤務形態一覧表
・組織体制図
・管理者の経歴書
・児童発達支援管理責任者の経歴書
・実務経験証明書、研修修了書(写)
・平面図
・設備・備品等一覧表
・運営規程
・障害児又はその保護者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要 
・資産状況(貸借対照表・財産目録等)
・協力医療機関との契約の内容
・児童福祉法第21条の5の15第2項各号に該当しない旨の誓約書
・役員名簿
・事業計画書
・収支予算書
・損害賠償発生時の対応方法を明示する書類
・介護給付費等算定に係る体制届出書、体制等一覧表、各加算届出
・事業所の不動産登記簿謄本、賃貸借契約書の写し等
・利用者名簿
・従業員(スタッフ)の雇用契約書
・契約書・重要事項説明書・個別支援計画
・耐震・消防設備チェック表および消防用設備等検査済み証の写し
・建築確認済み証の写し
・障害福祉サービス事業指定申請等に関する意見書
・指定障害児事業者等業務管理体制届出書 

4.法人の設立
株式会社、合同会社、NPO法人などの法人を設立、既に法人格を有している場合は事業目的の変更手続きを行います。事業目的には、「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」などのサービス名を入れる必要があります。

5.行政との事前協議
必要書類に基づき、関係法令に適合したものか、開業の準備状況に不備はないか事業所の工事前に協議を行っておきましょう。工事が始まってから手続きに不備が見つかると、開業時期の遅延に繋がるので要注意です。開業の3か月間までには協議を行いましょう。

6.資金調達
事業計画書作成時に緻密な収支計画書を作成しておくと、金融機関側の融資判断のプラス材料になりますので、事業計画書の段階でサービス内容、利用者人数、従業員数など、具体的なことまでしっかり決めておきましょう。

7.施設の工事・備品の準備
事前に物件の見込みをつけ、図面作成を行います。行政との事前協議で確認を受け、設備基準や消防基準を満たしているかの確認をします。また、申請のために工事と並行し、施設の備品を揃えて内部配置をする必要もあります。

8.人員の確保
人員基準に基づき、求人を募集します。

9.指定事業者申請
放デイや児発を開始する自治体にこれまでに準備した書類等を提出し、事業指定申請を行います。書類に不備があると受理されません。受付期間や申請方法などは各自治体に確認を行いましょう。開業2か月前には指定申請を受けられるようにじておきましょう。

10.施設の現地調査
施設の立会検査があります。事前協議の通り、児童福祉法や建築及び消防などに関する法令に基づいた施設・設備となっているか、遅くとも開業1か月前には確認を受けましょう。

11.開業準備
職員の研修や利用者との契約に関する書類作成などを行います。下記に主な例を挙げます。

・利用者関連
最重要事項説明書、利用契約書、利用者のアセスメント、支援計画書など

・職員関連
面談、研修、採用や給与、保険など

・業務関連
社内規定、業務マニュアル、事務用品、報酬請求等に関するソフトウェアなど

最新の放課後等デイサービス・児童発達支援事業の事業環境

令和3年度報酬改定の実施

令和3年度報酬改定

主な見直し点は以下3つです。

1.現行の区分1と2の報酬体系の廃止

2.基準人員における障害福祉サービス経験者の廃止(2年間の経過措置あり)

3.基本報酬および児童指導員等の加配加算の単位数

報酬改定は事業の利益に直結するので、必ず行政からの情報を確認しましょう。

放課後等デイサービスと児童発達支援の集客戦略の変化

放デイ・児発事業所推移

2012年障害者自立支援法の「児童デイサービス」から児童福祉法の「児童発達支援事業」と「放課後等デイサービス」に変更された事など、法改正に基づく規制緩和により、あらゆる事業者が参入できるようになりました。
ここ10年間で事業所数は激増し、今後も増加傾向は続くと考えられますが、いずれは全国的に飽和状態に近づき、本格的な淘汰の時代に突入していくと予想されます。

すなわち、開業しただけでは人が集まらない時代に入りつつあり、同業他社との差別化を図っていく必要があります。
そのためには、提供するコンテンツ=療育の柱と、セグメント=集客ターゲット層を確立し、事業所の強みを作っていかないといけません。

保護者ニーズの変化

放デイについては習い事的な価値が生まれ、競争の激しい一部地域では毎日別の放デイを利用することが一般的になりつつあります。今後全国的に放デイが増えていくと、同じような傾向が広まっていく可能性も十分あります。

ある新規開設の放デイの説明会で、「どんなことを放デイに求めているか?
」とアンケートを取ると、

「学校ではできない体験や、新しい発見ができるような療育を受けさせたい」

「将来のことを考えて、手に職をつける準備も兼ね備えた療育を受けたい」

「子どもが好きなことや興味のあることを伸ばしたい」

「同じ教室で体系的に整った療育を受けたい」

などといった声があがっており、これらの保護者のリアルなニーズを踏まえて療育内容、ひいては集客の際の訴求ポイントにしていくことが必須です。

全国的で広がるプログラミング×療育の可能性

「子どもたちの興味関心をもっと伸ばし、保護者のニーズに応えたい」
「競合と差別化するコンテンツを取り入れたい」

という事業者の声が広がる中、有効な療育サービスとしてプログラミングを用いた療育=プログラミング療育が注目を集めています。

以前からプログラミングと発達障がいには親和性があるといわれており、2020年から小学校でプログラミング教育が始まったことをきっかけに、保護者の間での興味関心も高まっています。

また、文部科学省や経済産業省などが中心となり、プログラミング教育を超えた「STEAM(スティーム)教育」を政策として推進しており、プログラミングを含めた理数IT能力に対する保護者のニーズは急速に伸びていくと考えられます。

プログラミング療育の詳細やプログラミング療育を実施できる教材については下記のページで詳しく解説しています。

プログラミング×療育の詳細はこちら

まとめ

放デイや児発の開業には1年ほどの準備期間が必要で、運営基準や、報酬の仕組み、複雑な申請書類などをある程度理解した上で、行政を含めた関係機関との協議を入念に行うことが大切です。

事業計画を作成するときにはもちろん、開業後も刻一刻と変化する社会情勢や行政の制度などをしっかりウォッチし、継続的に採算がしっかりとれる事業運営が重要です。

本記事が放デイ・児発の開業時の参考に少しでもなれば幸いです。