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子どもの興味から意欲を引き出すSTEAM教育

黒板の前に立つ中村先生
2022.04.14

今回ご紹介するのは、松茂小学校小学二年生の授業風景です。この日はタブレットのアプリ「ビスケット」を使ってアニメーションづくりに取り組んでいました。

日常生活とプログラミングのつながりを
学年に応じたことばで、分かりやすく紹介

低学年の子どもたちが「プログラミングとは何なのか?」を完全に理解することはできません。

そこで中村先生は、授業のはじめに、洗濯機をキーワードに「人と機械やロボットの違い」にみんなが気付けるよう問いかけました。

昔の洗い方もいまの洗濯機も、どちらも服をきれいにしてくれるけど、便利なのはどちらでしょう。
洗濯機は、自分で考えて洗濯をするのでしょうか?
コンピューターを動かしたいときは、何語で話すと伝わるでしょう。

「プログラミング」が身近なものだと感じられるように、子どもたちの関心を掴みながら、分かりやすく伝えるのもプロならでは!

スライドを見せる中村先生

「これはなに?と問いかけると、『洗濯機!』『勝手に洗ってくれる~』『それもプログラミングが入ってる』と自分の知識をフル回転で質問に応える子どもたち。」

中村先生の質問に答える子どもたち

自分で考えて行動し表現する
プログラミング的思考を増やす

「今回のアニメーションづくりでは、”仕組み”や”技”を紹介するだけ。大枠を伝えて、そのなかで自分のやりたいことを実現させていく、その過程を経験していくのがプログラミング授業です」と中村先生。
子どもたちが自分で自由に表現できる場を増やすことが大切なんですね。

「指示が細かいと、かえって違うことをやりたくなったりしてしまいますしね」。
二児の父でもあり、小学校教員免許を持つ中村先生。子どもたちの気持ちや行動パターンもしっかり先読みしていたのです。

プログラミングに挑戦する子どもたち

「考えるよりも先に手が動き出す子どもたち。できることを増やしていくために、『体験』は不可欠。」

操作ができるうようになったら、次のステップ!
「例えば、こんなふうにすればアニメーションのなかで雪を降らせることができます」と事例を紹介します。

プログラムのお手本を見せる中村先生

でも中村先生は「お手本と同じように(先生と同じやり方で)雪を降らせてみましょう」とは決して言いません。

雨を降らせたっていい。
雪の結晶を落としたっていい。
教えてもらった新しい技術や考え方のヒントを聞いて、どう反応するか、なにを見つけるか、どんな発想を広げるか。表現方法や取り組み方をゆだね、子どもたちの経験にしていくのです。

お手本を見てプログラムを作成する子どもたち

「徳島県のなかでも松茂町は温暖な地域。雪が降っても積もることがほとんどないので、『雪が降る』というフレーズに子どもたちはワクワクしていました。」

「やってみたい」の好奇心に火をともす

低学年では「体験を通してプログラミングを理解する」。これが中村先生のスタイルです。
基本の操作ルールも体験で理解、失敗して理解、を繰り返します。

「子どもたちが物事を理解するときには『体験』が重要です。『試したい!やってみたい』という好奇心があるからこそ、経験を増やしていくことができます。プログラミングの授業では、先生方の学級経営の方針がどうなのかがよく見えますね。子どもたちに指示を与えるのか、思考をさせたいのか」と中村先生。

子どもたちに様子を見守る中村先生

「『こうしてみたらどうなるか』と挑戦する子どもたち。失敗する様子も含めてじっと見守る中村先生。」


もくもくとプログラムの作成を行う子どもたち

「ヴィリングのSTEAM教育では、『やるべきことを指示する先生』と『先生の指示通り取り組む生徒』という図式はありません。」


小学2年生といえば、学校生活にも慣れ、教室のなかや友だちとの関係に「自分の居場所」や「自分の役割」が芽生えてくるころ。
タブレットの電源を入れるところから、それぞれの「個性」が見えていました。

言われる前に電源を入れてログインする子、先生の指示を待って丁寧に次に進む子、周囲の様子を見ながら取り組む子、立ち止まっている子を見つけて駆け寄ってあげる子、、、。中村先生も後藤先生も、その子どもたちを決してコントロールしようとしません。

得意不得意だけでなく、性格もひとり一人違うなかで、子どもたちの「〇〇してみたい」という意欲にストップをかけないのも、STEAM教育のポイントのようです。

互いに協力し合ってプログラムを作る子どもたち

STEAMの思考を学校教育から地域社会へ

2020年に小学校で必修化されたプログラミング授業。
株式会社ヴィリングでは、STEAM教育やプログラミング授業がスムーズに定着していくよう、授業提供や学校や自治体向けの研修を実施しています。

訪問時の1日の授業予定表

「最初はどうしよう、何からしたら良いのか、という状態だった」と話してくれた松茂小学校の中山校長。その理由のひとつが、指導要綱はあるものの、総合学習に入れてもいいし、特定の教科で活用してもいいと活用方法が広いこと。また先生たちにプログラミング授業の経験や知識が少ないため、研究にかける時間が膨大になってくる、という点もありました。

そんななか松茂町では、地域教育のビジョンと重ね合わせ、STEAM教育のプロである株式会社ヴィリングと協同でプログラミング授業をスタート。
プログラミングスクールを運営する株式会社ヴィリングの授業展開が参考になり、先生方が授業研究のヒントを手に入れたり、新たな知識や発想を得る場面もあるようです。実際に「図工で絵を描くように、アニメーションづくりを取り入れてみようと取り組んでいます」とお話してくださる先生もいました。

子どもたちの個性に合わせて授業を展開する中村先生

「担任の先生と連携をとりながら、子どもたちの個性に合わせて授業を展開。」


子どもたちの興味と学びをどう結びつけるかも重要です。事前の打ち合わせでは学年の特徴や行事に応じた企画にできないかも相談します。
「トゥルトゥルなら低学年でも取り組みやすいですよ」
「ボール型のロボットもあって面白いかもしれませんね」
とプロならではの情報量で最新のアイテムを使った授業も提案しています。

先生間での事前の打ち合わせの様子

「地域や学校の個性・特徴・目標に沿って、定期的に校長先生や学年主任の先生たちと打ち合わせし、STEAM教育を創り上げています。」


「これからの社会では、記憶力だけでなく、自分の考えを人に伝えることが重要です。自分の意思を伝えたか、考えを表現したかということが大事になってきます。そうした積み重ねが子どもたちの自己有用感を高めることにもつながっていくと感じています」と中山校長。
子どもたちが表現力や自己有用感を持てるSTEAM教育を実現したい、その足がかりのひとつとしてプログラミングの授業をしっかり活用していきたいと、と考えていらっしゃるのが伝わってきました。

体験格差を解消し
地域社会の課題と向き合える人づくりへ

株式会社ヴィリングが目指しているもののなかに「体験格差の解消」があります。
地方で子育てをしている人たちはみんな、「地方だからチャンスが少ない」「田舎だから人材がいない」という理由で子どもたちの体験の格差をつくりたくない、と感じているはずです。

人口わずか1.5万人の松茂町。その学校でSTEAM教育のプロと学校の先生たちが連携する様子から、学校教育や自治体が一体となって担う「体験格差の解消」への力は大きいのだと実感しました。
家庭環境はひとり一人違いますが、学校・自治体だからできることがあります。
また、こうした「子どもたちの体験格差の解消」は、同時に、教育関係者や子育てに関わっている私たち大人が地域の課題と向き合っていくきっかけにもなっています。

学校が外部企業や近隣大学や団体、企業に協力を求める事例は、とても身近になってきました。
垣根を超えた新たな学校教育システムに変わろうとしているいま、STEAM教育は地方の学校にとって大きなチャンスになるかもしれません。

ライター紹介

宮本幸子(みやもとさちこ)/地方でも実現できる「プログラミング的思考を育むSTEAM教育」に関心を持ち、株式会社ヴィリングが提供する公立小中学校のSTEAM教育を取材中。タウン誌の編集やラジオリポーターを経て、現在はライター・講師として活動。徳島県在住、二児の母、1980年生まれ。