STEM・STEAM教育とは?世界での実施事例や日本の現状について紹介
STEM・STEAM教育とは?
STEM(ステム)教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの英単語の頭文字を組み合わせた教育用語です。
【STEM教育】に、Art(アート)の創造性教育を加えた教育概念が【STEAM(スティーム)教育】です。STEMにArtが加わることで多面的見方が促され、新しい解決策を生み出せるとされています。
- 【S】:科学(Science)実験や観察から自然現象の法則を見つけること
- 【T】:技術(Technology)発生した事象に最適な条件やしくみを見つけること
- 【E】:工学(Engineering)数学や科学を基礎とし、有用な物や環境などを設計すること
- 【A】:芸術(Art)アート、デザイン
- 【M】:数学(Mathematics)数量を論理的に表し、自然界にない有用なものを作り出す営み
STEAM教育の歴史と成り立ち
STEM教育の歴史
「STEM教育」の起源は1990年代のアメリカ。国際競争力を高めるため、科学技術人材の育成を目的とした教育政策として、アメリカ国立科学財団が「SMET」という教育方針を打ち出しました。4つの分野は密接に関わり合っており、個々の学問を一元的に学ぶのではなく関連づけて学ぶという教育システムです。2001年に、名称がSMETからSTEMに変更されました。
2009年、当時のオバマ大統領が、米国科学アカデミーの演説でSTEM教育の重要性を強調し「STEM教育」が認知されるようになりました。
そして2013年、「STEM教育5カ年計画」が発表されたことで、STEMの認知は大きく広がりました。STEM教育5カ年計画は、2012年に実施された生徒の学習到達度調査(PISA)で、アメリカの数学・科学リテラシーの低さが問題になったことに対応したと考えられます。また、2020年までを目安として、初等・中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成すること、STEM分野の大学卒業生を100万人増加させるなどの目標を立てました。その中では、年間30億ドルの予算を使うということが発表され、当時大きな話題を呼びました。
さらに2015年、STEM教育法というものができます。ここでは、STEM教育の定義を拡張し、コンピュータサイエンスを含めたり、問題を社会と結び付けたりして、STEM教育としての捉え方から人文系への広がりを見せています。
STEMからSTEAMへ
2006年、アメリカの教育者ジョーゼット・ヤークマン氏により提唱された教育概念が「STEAM教育」です。
初期のSTEAM教育は、STEM教育にArts(リベラル・アーツ)の要素を加えたもので、
「STEAM教育は学問領域を横断して指導する枠組みである」と示しています。
【A】には様々なとらえ方があり、Arts(リベラル・アーツ、教養)、Art(アート、デザイン)だけでなく、ROBOTICS、E-STEM(環境)など、取り扱う社会的課題によって様々な領域を含んだ派生形が存在し、いわゆる文系・理系の枠を超えた学びとなっています。
世界のSTEM・STEAM教育
諸外国では、STEM(科学・技術・工学・数学)分野のイノベーション人材育成に国策として積極的に取り組んでいます。
アメリカ
- STEM教育5ヶ年計画
2020年までに初等中等教育段階のSTEM分野教員を10万人養成し、高校卒業までの間でSTEM分野の経験を持つ若者を毎年50%増加させる計画。
- High Tech High
アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴに設立された公立高校。
公費運営のため授業料が無償。抽選で入学者が選ばれるので、生徒の人種やバックグラウンドが多種多様であり、生徒の約5割は低所得層の子ども。
子どもたちが自分たちでテーマを考えプロジェクトを進める課題解決型学習(PBL)を実施しており、テストなどの試験はない。
EU
- 欧州2020
「EU加盟各国は、人材を確保するため、自然科学・工学分野の卒業生を増加させる。また教育において、創造性、イノベーション志向、起業家精神を育てるようなカリキュラムを強化する。」とし、web上で参加できる「EU科学教育コミュニティ」 を開設。
シンガポール
- サイエンスセンター
1977年12月に開設された、シンガポール最大の科学館であり次世代の理系人材の育成を担う機関。
2014年、シンガポール政府の協力のもと、中学校の全ての生徒たちにSTEMプログラムを提供するための組織「STEM Inc」を立ち上げた。 STEM Inc には、STEM 関連領域で修士号・博士号を持つカリキュラムスペシャリストやSTEM 講師が所属しており、それぞれ学校現場にて学習支援を行う。
中国
- 翺翔(こうしょう)計画
北京市が実施する高大連携型のイノベーション人材育成策。参加校(一般高校200校)・育成拠点校(29校)・大学等(36機関)の3者が連携し、生徒は研究者のもとで各自の課題に取り組む。結果よりもプロセスを重視する。
日本のSTEAM教育
AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日においては、これまでの文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能力の育成が求められています。
文部科学省の取り組み
日本では、2016年に内閣府がSociety 5.0を発表したことで、STEAM教育への関心が高まりました。
Society5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を示しています。
教育再生実行会議第11次提言では、STEAM教育は「各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」とし、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材を養成することができるよう、新学習指導要領において充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育に加え、Society5.0の実現に向けたSTEAM 教育の推進が提言されました。
また、学習指導要領においては、学習の基盤となる資質・能力や、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を育成するため、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図ることとされています。
そのため文部科学省としては、STEMに加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進することが重要、としています。
このように国内での議論では、「教科横断的な学び」、「実社会での問題発見・問題解決」などがキーワードになっています。
小学校・中学校での取り組み
- STEAMライブラリー(経済産業省)
STEAMライブラリーとは、経済産業省の「未来の教室」プロジェクトが開発した、様々な社会的・学問的テーマを扱った動画・資料等のデジタルライブラリーです。
先生方が学校現場で活用したり、子どもたち自身がいつでも視聴・活用可能な形で学べる教材として、オンライン上に掲載、配信されています。「知る」と「創る」の循環的な学びを実現するための教材コンテンツや指導案などが1カ所に集約されたプラットフォームとなっています。
高校での取り組み
- 科学の甲子園(国立研究開発法人 科学技術振興機構)
科学の甲子園は平成23年度に創設された大会で、全国の科学好きな高校生が集い、理科・数学・情報における複数分野の競技を行う取り組みです。
競技には筆記競技と実技競技があり、いずれもチームで課題を分担、相談するなど協力して成果を競い合います。
筆記競技では、理科、数学、情報の中から、習得した知識をもとにその活用について問う問題が出題されますが、教科・科目の枠を超えた融合的な問題が出題される可能性もあります。実技競技では、ものづくりの能力、コミュニケーション能力などを用いて課題解決能力を競います。
- スーパーサイエンスハイスクール(国立研究開発法人 科学技術振興機構)
2002年に開始した取り組みで、文部科学省より指定を受けた学校において、科学技術系人材の育成のため、独自のカリキュラムによる授業や、大学・研究機関などとの連携、地域の特色を生かした課題研究などを行っており、2023年度には全国で218の学校が指定校となっています。
スーパーサイエンスハイスクール指定校では、学習指導要領の範囲を超えた活動を行うことが可能です。そのため、受験勉強に使うための詰め込み教育ではない、実践的で体験的な教育を受けることができます。
日本でのSTEAM教育の課題
このように、日本でもその重要性が認知され急速な広がりを見せているSTEAM教育ですが、推進していく上で課題も抱えているのが現状です。
専門的なスキルを持つ教職員の不足
STEAM教育では、これまでの文系・理系といった枠にとらわれず、様々な分野を横断しながら子どもたちを指導する必要があります。そのような高いスキルや専門的な知識を持ちあわせている教員は、現状不足している状況です。また、小中学校ではプログラミングの必修化も始まっており、教職員は忙しい中で更なるスキルアップを求められています。
STEAM教育を学校現場で取り入れていくには、教職員の育成や人材の確保にも注力していく必要があります。
ICT環境の整備の遅れ
文部科学省によるGIGAスクール構想(生徒1人につき1台のパソコンや高速ネットワーク環境などを整備する取り組み)により、小中学校の児童生徒に対する情報端末配備が進みました。しかし実際の学校現場では、ICT環境の整備がまだ不十分なところも少なくありません。ICT環境を前提としたSTEAM教育の実施においては、学校現場のICT環境の整備も大きな課題となっています。
STEAM教育の民間での実践例
その有用性は理解されているものの、学校現場への導入にはまだ課題が残っているSTEAM教育。では、質の高いSTEAM教育を受けるにはどのようにすればよいのでしょうか。
STEAM教育&プログラミングスクール「STEMON(ステモン)」で学ぶ
STEMON(ステモン)とは
「STEMON(ステモン)」は、幼児・小学生向けのSTEAM教育&プログラミングスクールです。STEAM教育を通して、テクノロジーを活用した創造力・表現力・論理的思考力・問題解決力を育む習い事で、2014年と国内では早い段階からSTEM教育に特化したスクールを展開しています。
子どもの発達段階に合わせた教材・カリキュラムを開発し、年中から小学校6年生まで通える6つのクラスを用意しています。低学年では主に物理やプログラミングの基礎を学び、高学年ではパソコンを本格的に使用し、ゲームやアニメーション制作・ロボット制御を行います。
レッスンの特徴
ステモンのレッスンは「しる」、「つくる」、「ためす」の3つのステップに分かれています。組み立て手順書はなく、つくりながら学ぶこと(コンストラクショニズム)にたっぷり時間をかけます。子どもたちが夢中になって取り組めるような仕掛け(フロー理論)があります。
STEMONのレッスンではテーマに沿っていれば何を作ってもよく、正解は1つとは限りません。一緒に学ぶ仲間と協力して試行錯誤し、自分なりの答えを作り上げていくことで、創造する力や論理的思考力を育みます。
STEAM教育を学ぶならステモン
STEAM教育は、科学・技術・工学・芸術・数学の5つの領域を、実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育です。
世界的に積極的な取り組みが見られるSTEAM教育は、いよいよ日本でも推進が提言され、教育現場をはじめとして今後ますます広がりを見せていくでしょう。
STEAM教育に興味がある、子どもの創造力や論理的思考力を育みたい、プログラミングだけではなく物理の原理も楽しみながら学んでほしい…そんな希望にお応えできるのが、幼児・小学生向けSTEAM教育&プログラミングスクール「STEMON(ステモン)」です。
STEMONでは無料体験も随時実施しております。
気になる方はぜひお問い合わせください。
参考資料:日本STEM教育学会/STEAM教育への取り組み/STEAM教育等の教科等横断的 な学習の推進について/諸外国の政府におけるSTEM人材戦略の取組①