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幼児教育にプログラミングは必要か?必要なのは「プログラミング」ではなく、「プログラミング教育の準備」

2020.08.08

2020年から小学校では「プログラミング教育」が始まります。
この流れを受けて、幼児向けのプログラミング教室や教材も現れてきました。
今回は、「幼児教育にプログラミングは必要か?」ということについて、考えていきます。

必要なのは「プログラミング」ではなく「プログラミング教育の準備」

結論から言うと、幼児期では本格的なプログラミングを学ぶよりも、慣れ親しむこと、良い手順を考えることを、まずは楽しむことの方が重要です。
むしろ幼児期は、小学校から始まる「プログラミング教育」に向けての準備を行うことが、後の子どもの成長につながります。

そもそも、小学校から始まる「プログラミング教育」とは一体、どんなことを行うのでしょうか?
まずは「プログラミング教育」の中身を見ていきましょう。

「プログラミング教育」は、「プログラミングができるようになること」ではない

実は、文部科学省が提唱する「プログラミング教育」は、小学生からプログラミングができるようになることを目指すものではありません。
文部科学省の資料を見ると、「プログラミング教育」は以下のように説明されています。

子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの
【出典:文部科学省 平成28年6月28日 教育課程部会 教育課程企画特別部会 参考資料2

最後に出てくる「プログラミング的思考」は、

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、1つ1つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく
【出典:文部科学省 平成28年6月28日 教育課程部会 教育課程企画特別部会 参考資料2

という意味です。

「結局どういう力を身につければいいの?」

と思った方も多いと思いますので、もっとわかりやすく整理してみます。

「プログラミング教育」で養う4つの力

「プログラミング教育」で養う力を4つに分けて、具体的に表してみました。

  1. コンピューターに関する基礎的な素養
    日常の色々なものにコンピューターが使われていることや、コンピューターを使いこなす方法を知ること

  2. 問題解決のための思考力(プログラミング的思考力)
    物事を適切に認識する「読解力」と、認識した様々なことが、どのようにつながっているかを整理する「構造化力」を基礎とし、自ら問いを立て、問題を解決する力

  3. 自らの意思に基づいて創造や表現する力
    コンピューターにはできない、新しいものをつくったり、表現したりする力

  4. 人の感情を理解し、人を動かす力
    人の考えや気持ちを理解し、色々な人たちと協力して、物事を進めていく力

いかがでしょうか?
1と2は「コンピューターを使いこなす力」、3と4は「コンピューターにはできない、人間にしかできない力」と言い換えることもできます。


ここからわかるのは、プログラミングやロボットを扱う能力は、1つ目の「コンピューターに関する基礎的な素養」に過ぎないということです。これらの知識や技能は、成長に併せて身につけていけばよいもので、大切なのは2つ目から4つ目の力です。

思考力や創造力、人と協力する力がないと、知識や技術をいくら学んでも活かすことができません。これら3つの力は、大人になってから身につけるのは難しいため、色々な経験や体験を通して、子どものときから磨いていく必要があります。

幼児期から「プログラミング教育の準備」をはじめよう!

小学校からはじまる「プログ適ング教育」を踏まえた上で、幼児期では4つの能力につながる基礎的な力を育んでおくことが望ましいと言えます。

身の周りのものを通して、ものの仕組みについて考えたり、数や図形などへの興味を養ったり、遊びを通して自由にものをつくったりする。
また、色々な友だちと関わりながら、相手の気持ちを察することを学ぶのも大切です。

もちろん、これらの活動の中で、手段としてコンピューターを使うことはあるかもしれませんが、あくまでそれは手段であり、その目的が何かということを常に意識する必要があります。

ヴィリングでは、「プログラミング教育の準備」として、幼児教育に「STEM教育」と呼ばれる学習法を取り入れる試みを行っています。(https://peraichi.com/landing_pages/view/stemon-online-kinder
なぜ、幼児教育にSTEM教育を取り入れるのかについては、別な機会に詳しく紹介する予定です。

よく子どもの成長は木にたとえられます。幹を上に伸ばすことばかりを優先すると、木の幹は細く、折れやすくなってしまいます。時間をかけても、しっかり太い幹を育てたほうが倒れにくく、枝葉もたくさんつけることができます。

「幼児期からプログラミングを早く始めさせないと!」

と焦るのではなく、まずは知識や技能を養う土台をしっかり固めましょう。